この分野は「登場人物カタログ」です。まず設計思想を押さえると、細かい数字は“暗記”ではなく“逆算”で出せるようになります。
労働災害や健康障害は、現場任せにすると誰も責任を持たず後回しになります。そこで安衛法は、一定規模以上の事業場の事業者に「安全衛生を担う人を必ず選任せよ」と義務づけました(第3章=第10〜19の3)。ポイントは、体制の重さが「規模・業種・有害業務」の3つで段階的に増えるように作られていることです。
| 制度の性質 | だから、どう体制が変わるか | 効いてくる場面 |
|---|---|---|
| ①規模が大きいほど目が届かない | 人数のしきい値を超えると選任義務が発生し、さらに規模が上がると人数が増える | 総括(100/300/1,000人)・衛生管理者の人数表・産業医2人(3,000人超) |
| ②有害業務があると危険が重い | 通常の体制に上乗せ(専任・専属・衛生工学・歯科医師)される | 専任衛生管理者・専属産業医・衛生工学衛生管理者・歯科医師の意見聴取 |
| ③責任と専門性は性質が違う | 最終責任はトップ本人(総括)、健康管理は独立した専門家(産業医)が担う | 総括=統括管理する者そのもの/産業医=事業者の指示に従わない独立性 |
| ④危険は「規模」だけでは測れない | 危険な作業そのものがあれば、人数に関係なく担い手を置く | 作業主任者(特定化学物質・高圧室内など)・救護の技術管理者 |
同じ役職でも、条文が3つの層に分かれています。「選任しなさい」という義務は法(安衛法)、「どの業種・どの規模から」は令(施行令)、「何人・どんな資格・毎週か・14日以内か」は則(安衛則)。数字がどこに書いてあるか迷ったら、この3層を思い出せば当たりがつきます。
第3章(第10〜19の3)に登場する管理体制のプレイヤーを、役割と根拠の層でまず並べます。
| プレイヤー | ざっくりの役割 | 選任の主な根拠(法/令/則) |
|---|---|---|
| 総括安全衛生管理者 | 事業場全体の安全衛生の総責任者(トップ本人) | 法10・令2・則2〜3の2 |
| 安全管理者 | 安全面の技術的事項を管理(安全側) | 法11・令3・則4〜6 |
| 安全衛生推進者/衛生推進者 | 小規模事業場(10〜50人未満)の担い手 | 法12の2・則12の2〜12の4 |
| 衛生管理者 | 衛生面の技術的事項を日常的に管理 | 法12・令4・則7〜12 |
| 産業医 | 労働者の健康管理を担う医師(独立性あり) | 法13〜13の3・令5・則13〜15の2 |
| 作業主任者 | 危険・有害な「作業」を直接指揮 | 法14・令6・則16〜18 |
| 統括安全衛生責任者ほか | 元請・下請が混在する現場の調整系統 | 法15〜16・令7・則18の2の2〜20 |
| 安全/衛生/安全衛生委員会 | 労使で安全衛生を調査審議する会議体 | 法17〜19・令8〜9・則21〜23の2 |
| 救護の技術的事項を管理する者 | ずい道・圧気工法の救護に備える(第2章の二) | 法25の2・令9の2・則24の3〜24の9 |
| 用語 | 意味 | 主に問題になる役職 |
|---|---|---|
| 選任(せんにん) | そもそも「置く」こと | すべての管理者・責任者 |
| 専任(せんにん) | その職務だけに就く(他の業務と兼務しない) | 衛生管理者(則7条1項5号) |
| 専属(せんぞく) | その事業場だけに所属する(掛け持ちしない) | 産業医(則13条1項3号)・衛生管理者は原則専属 |
読みが同じ「せんにん」の専任と、字が似た専属は、試験で最も混同を誘われます。専任は衛生管理者の話、専属は産業医の話とセットで覚えると、肢の中で入れ替えられても気づけます。
名前も読みもそっくりですが別物です。総括安全衛生管理者=1つの事業場のトップ(法10条)。統括安全衛生責任者=元請・下請が混在する現場の調整役(法15条)。問題文に「混在作業」「関係請負人」「下請」が無ければ「統括」は選べません。R6-問1は、この2語を空欄で入れ替えて選ばせる出題でした。
この分野の得点源は、下の表を「規模で決まる/有害業務で決まる/作業の有無で決まる」の3グループに分けて持てるかです。まず全体を俯瞰し、以降の各章で1人ずつ詳述します。
| 役職 | 選任義務が発生する規模 | 「上乗せ」条件(専任・専属・増員など) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 総括安全衛生管理者 | 業種別:林・鉱・建設・運送・清掃=100人/製造業(造船業含む)・小売業等=300人/その他=1,000人 | トップ本人を充てる。準ずる者は不可 | 法10・令2 |
| 安全管理者 | 令2条1・2号の業種で50人 | 一定の業種・規模で1人を専任 | 法11・令3・則4 |
| 安全衛生推進者/衛生推進者 | 常時10人以上50人未満 | ― | 法12の2・則12の2 |
| 衛生管理者 | 全業種50人(人数は規模で増加:50〜200=1/〜500=2/〜1,000=3/〜2,000=4/〜3,000=5/3,000超=6) | ①1,000人超 or 500人超+有害業務30人以上→1人を専任/②500人超+一定有害業務30人以上→衛生工学1人 | 法12・令4・則7 |
| 産業医 | 全業種50人 | ①1,000人以上 or 一定有害業務500人以上→専属/②3,000人超→2人以上 | 法13・令5・則13 |
| 作業主任者 | 規模は無関係(政令で定める危険有害な作業があれば選任) | ―(免許者 or 技能講習修了者) | 法14・令6・則16 |
| 歯科医師の意見聴取 | 塩酸・硝酸・硫酸等を扱う業務に50人以上 | ―(「意見を聴く」努力。健康管理を行わせる義務ではない) | 法66③・令22③・則14⑤ |
| 統括安全衛生責任者 | 造船業・建設業で混在労働者:造船・一般=50人/ずい道・一定橋梁・圧気工法=30人 | その場所で統括管理する者を充てる | 法15・令7 |
| 安全委員会 | 業種別:一定業種50人/その他の令2条1・2号業種100人 | ― | 法17・令8 |
| 衛生委員会 | 全業種50人 | ― | 法18・令9 |
事業場の安全衛生の「司令塔」。ここで最重要なのは「誰を充てるか(=トップ本人)」と「業種別の規模」です。
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者・衛生管理者・救護の技術的事項を管理する者を指揮させ、次の業務を統括管理させなければならない(第1項)。
総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない(第2項)。つまりトップ本人であり、「これに準ずる者」から選ぶことはできません。
「その事業の実施を統括管理する者又はこれに準ずる者のうちから総括安全衛生管理者を選任」——これは誤り。総括はトップそのものです(法10条2項)。「準ずる者」でよいのは委員会の議長(法17〜19条)。月1回の会議に出る議長はトップでなくてよいが、事業場の安全衛生の最終責任者はトップでなければならない、という性質の違いが根拠です。
| 号 | 業種 | 規模 |
|---|---|---|
| 一 | 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 | 100人 |
| 二 | 製造業(物の加工業を含む=造船業もここ)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 | 300人 |
| 三 | その他の業種 | 1,000人 |
「50人の造船業で総括を選任」(H28-問1(1))は誤り。造船業は製造業の一種なので令2条二号の300人グループです。統括安全衛生責任者(造船業・50人〜)の話と混ぜて、前段だけ誤らせにきます。製造業・小売業・自動車整備業・機械修理業=300人とまとめて覚えます。
総括の選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行う(則2条1項)。選任したときは遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告する(則2条2項。2025年1月1日以降は原則電子申請)。また、総括が旅行・疾病・事故その他やむを得ない事由で職務を行えないときは代理者を選任しなければならない(則3条)。
選任の期限(14日以内)と報告の時期(遅滞なく)は別物。肢では片方の数字をもう片方に付け替えてきます。なお代理者の規定は総括→(準用で)衛生管理者にはあるが、産業医にはありません(この対比はH29-問1(5)の急所。→ 産業医の章・横断パターンで再掲)。
安全管理者は安全側のため衛生コンサル試験では主役になりませんが、総括が「指揮」する相手として第3章に位置します。推進者は小規模事業場の担い手です。カタログとして押さえます。
事業者は、政令で定める業種・規模の事業場ごとに、資格を有する者から安全管理者を選任し、総括の業務(法10条1項各号)のうち安全に係る技術的事項を管理させる。対象は令2条一号・二号の業種で常時50人以上(令3条)。選任は14日以内・原則専属(則4条)。資格は、一定の学歴+産業安全の実務経験+厚労大臣が定める研修修了、又は労働安全コンサルタント等(則5条)。安全管理者は作業場等を巡視し、危険のおそれがあれば直ちに必要な措置を講じる(則6条。頻度の定めはなく随時)。一定の業種・規模では1人を専任とする(則4条1項4号)。
安全管理者=随時(頻度の定めなし)/衛生管理者=毎週1回/産業医=毎月1回(条件付きで2月に1回)。誰の巡視かで頻度が変わります。
安全管理者・衛生管理者の選任義務がない常時10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者(安全管理者の選任業種以外では衛生推進者)を選任する(則12条の2)。選任は事由発生から14日以内、原則専属だが労働安全・労働衛生コンサルタント等なら専属でなくてよい(則12条の3)。選任したら氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等で関係労働者に周知(則12条の4)。
常時50人以上=衛生管理者・産業医・(衛生)委員会が義務になる規模。10〜50人未満=推進者で足りる規模。多くの制度が「50人」で切り替わることを地図として持っておくと、規模の肢を素早く仕分けできます。
事業者は、事業場の安全衛生水準の向上を図るため、安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者・衛生推進者その他労働災害防止業務に従事する者に対し、その業務に関する能力の向上を図るための教育・講習等を行い、又は受ける機会を与えるよう努めなければならない(法19条の2=努力義務)。厚生労働大臣はこの教育等の指針を公表する。指針の公表はインターネットの利用その他適切な方法による(則24条)。また大臣は、事業者が自主的に行う安全衛生活動(方針表明・危険性有害性の調査・目標設定・計画のPDCA)を促進する指針を公表できる(則24条の2)。
毎年ほぼ確実に問われる中核。「人数(規模)」「資格(業種)」「専属の例外」「専任」「衛生工学」の5点を切り分けます。
事業者は、都道府県労働局長の免許を受けた者その他省令で定める資格を有する者から衛生管理者を選任し、衛生に係る技術的事項を管理させる(法12条)。対象は常時50人以上の全事業場(令4条)。選任は14日以内(則7条1項1号)。
| 事業場の規模(常時使用する労働者数) | 衛生管理者数 |
|---|---|
| 50人以上200人以下 | 1人 |
| 200人を超え500人以下 | 2人 |
| 500人を超え1,000人以下 | 3人 |
| 1,000人を超え2,000人以下 | 4人 |
| 2,000人を超え3,000人以下 | 5人 |
| 3,000人を超える場合 | 6人 |
2,000人ちょうどは「1,000人を超え2,000人以下」=4人。「2,000人を超え」て初めて5人です(R7-問1ハは「5人」を誤りにする趣旨)。600人は「500人を超え1,000人以下」=3人(R5-問1のA)。表の“境目”を正確に。
| 区分 | 業種 | 選任できる資格 |
|---|---|---|
| イ | 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業 | 第一種衛生管理者免許 or 衛生工学衛生管理者免許 or 則10条各号の者 |
| ロ | その他の業種 | 第一種・第二種・衛生工学のいずれか or 則10条各号の者 |
則10条各号の者=医師・歯科医師・労働衛生コンサルタント・厚生労働大臣の定める者。
清掃業・医療業・製造業など「イ」の業種では第二種は不可(第一種か衛生工学)。逆に各種商品小売業などは「その他の業種(ロ)」なので第二種でOK(R2-問1(3)が正しい肢)。H28-問1(2)は清掃業に第二種を混ぜ、かつ「厚労大臣の定める者」を落として誤らせています。
衛生管理者は原則としてその事業場に専属の者を選任する。ただし、2人以上選任する場合に、その中に則10条第3号の者(=労働衛生コンサルタント)がいるときは、その1人については専属でなくてよい。
「医師又は労働衛生コンサルタントは非専属でよい」(R1-問1(2))は誤り。例外はコンサルに限られ、しかも1人まで。医師を混ぜてくるのが罠です。R3-問1(3)は「原則として専属」と書いてあるので正しい——「原則として」という限定語の有無で正誤が変わる点にも注意。
大規模・有害業務がある事業場では、通常の衛生管理者に2種類の上乗せがかかります。トリガーとなる有害業務の範囲が微妙に違うのが急所です。
| 専任の衛生管理者(5号) | 衛生工学衛生管理者(6号) | 専属の産業医(13条1項3号) | |
|---|---|---|---|
| 効果 | 1人を専任(他業務と兼務しない) | 1人を衛生工学免許者から | その事業場だけに所属 |
| 規模の条件 | ①1,000人超、または②500人超 | 500人超 | ①1,000人以上、または②有害業務500人以上 |
| 有害業務の条件 | ②のとき:坑内労働 or 労基則18条各号(=全部)に30人以上 | 坑内労働 or 労基則18条1号・3〜5号・9号に30人以上 | 則13条1項3号イ〜カ(深夜業等を含む独自リスト)に500人以上 |
| 対象になる有害業務の例 | 高熱・低温・放射線・じんあい・異常気圧・振動・重量物・騒音・有害物ガス 等 | 高熱・放射線・じんあい・異常気圧・有害物ガス(低温・振動・重量物・騒音は除外) | 上記+深夜業を含む業務 等 |
労基則第18条:一 多量の高熱物体/二 多量の低温物体・著しく寒冷/三 有害放射線/四 じんあい・粉末飛散/五 異常気圧下/六 削岩機・鋲打機等の振動/七 重量物取扱い等重激/八 ボイラー製造等の強烈な騒音/九 鉛・水銀・塩酸・硝酸・硫酸等の有害物のガス・蒸気・粉じん/十 大臣指定業務。
衛生工学衛生管理者は「工学的に環境を制御する」専門家。だから対象も換気・遮蔽・除じん等の工学的対策が効く有害業務(高熱・放射線・じんあい・異常気圧・有害物ガス=1・3〜5・9号)に絞られています。低温・振動・重量物・騒音(2・6・7・8号)は専任のトリガーにはなるが衛生工学にはならない——この“号のズレ”が繰り返し問われます。
H30-問1(3)は400人(=500人超でない)で塩酸ガス30人でも専任は不要。R1-問1(3)は1,200人+高熱物体50人で4人・専任・衛生工学すべて必要(正しい肢)。R7-問1ニは硝酸業務20人=30人未満で衛生工学不要。R5-問1Bは600人+著しく寒冷40人で専任が必要。「規模の土台」と「有害業務の人数・号」を両方見る癖をつけます。
衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備・作業方法・衛生状態に有害のおそれがあるときは直ちに必要な措置を講じる(則11条)。
R5-問1のCは「衛生管理者の巡視=毎週」。ここに「毎月」を入れると、産業医の巡視頻度との取り違えになります。
やむを得ない事由で衛生管理者を選任できず、所轄都道府県労働局長の許可を受けたときは、則7条1項の規定によらないことができる(特例。則8条)。また、都道府県労働局長は、選任義務のない2以上の事業場が同一地域にある場合、共同して衛生管理者を選任すべきことを勧告できる(則9条)。
キーワードは「独立性」。産業医は事業者に雇われても、医学的判断は事業者から独立している——ここが分かれば産業医の肢の多くは解けます。
事業者は、政令で定める規模(常時50人以上。令5条)の事業場ごとに、医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせる(法13条1項)。選任は14日以内(則13条1項1号)。
次の者は産業医に選任できない:法人の代表者/個人事業主(いずれも利害関係のない者を除く)/事業場においてその事業の実施を統括管理する者。
「事業の実施を統括管理し、診療所長を兼務する医師を専属産業医に選任できる」(R1-問1(4))は誤り。経営を統括する立場と、労働者の健康を守る産業医の中立性がぶつかるためです。要件を満たす医師でも、トップ本人は不可。
次のいずれかで、産業医はその事業場に専属:①常時1,000人以上、または②次の有害業務に常時500人以上従事。
イ 多量の高熱物体・著しく暑熱/ロ 多量の低温物体・著しく寒冷/ハ 有害放射線/ニ じんあい・粉末飛散/ホ 異常気圧下/ヘ 振動業務/ト 重量物取扱い等重激/チ ボイラー製造等の強烈な騒音/リ 坑内業務/ヌ 深夜業を含む業務/ル 有害物取扱い業務/ヲ 有害物のガス・蒸気・粉じん発散業務/ワ 病原体汚染業務/カ 大臣が定める業務。
H29-問1(2)は「深夜業に500人」で専属(有害業務ルート)が正しい肢。R7-問1ロは全体2,000人なので「1,000人以上」ルートで専属確定。同じ問で硝酸業務は20人しかおらず、有害業務ルート(500人以上)では届きません。専属になった理由が①か②かを意識します。
常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では、産業医を2人以上選任する(R7-問1イは2,000人で「2人」を誤りにする趣旨)。
産業医は、必要な医学知識について次のいずれかを満たす医師:①厚労大臣の指定する者が行う研修の修了者/②産業医科大学等で所定の課程を修めて卒業し実習を履修した者/③労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、区分が保健衛生であるもの/④大学で労働衛生の科目を担当する教授・准教授・講師等/⑤大臣が定める者。
「保健衛生若しくは労働衛生工学の区分により合格した者」(R3-問1(2))は誤り。産業医の職務は健康管理であり、労働衛生工学の知識だけでは足りないため、保健衛生区分に限るのが則14条2項3号です。
産業医は、医学に関する知識に基づいて誠実にその職務を行わなければならない(法13条3項)。また、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し必要な勧告をすることができ、事業者はこれを尊重しなければならない(法13条5項)。勧告をしようとするときは、あらかじめ勧告の内容について事業者の意見を求める(則14条の3第1項)。事業者は勧告を受けたら、勧告内容と講じた措置を記録し3年間保存する(則14条の3第2項)。産業医は知識・能力の維持向上に努める(則14条7項)。事業者は、産業医が勧告等をしたことを理由に解任その他不利益な取扱いをしてはならない(則14条4項)。また事業者は産業医に対し職務を行い得る権限を与えなければならない——これには、事業者・総括への意見陳述、職務に必要な情報の労働者からの収集、緊急時に労働者へ必要な措置をとるべきことを指示する権限が含まれる(則14条の4)。
「事業者の指示に基づいて誠実に職務を行う」(R4-問1(3))は誤り。正しくは「医学に関する知識に基づいて」(法13条3項)。R2-問1(4)も、危険を発見した産業医が「総括安全衛生管理者の指示に基づいて」措置する——は誤りで、産業医は直ちに自らの判断で措置します。「指示」という語が出たら独立性を疑う。R4-問1(4)は勧告+あらかじめ意見を求める流れで正しい肢です。
産業医を選任した事業者は、産業医に必要な情報を提供する(法13条4項)。提供する情報の一つが、面接指導の基準時間を超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名・超えた時間(則14条の2第1項2号)。
「100時間に満たない者を除き」(R1-問1(5))は誤り=正しくは80時間。「法定労働時間を超えた全ての労働者」(R3-問1(5))も誤り=対象は80時間超の者のみ。80時間=面接指導・情報提供の基準、100時間=研究開発業務・高度プロフェッショナル制度の別基準、と数字の紐づけを分けて覚えます。
産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、有害のおそれがあるときは直ちに措置を講じる。ただし、事業者から毎月1回以上次の情報(①衛生管理者の巡視結果、②委員会の調査審議を経て事業者が提供することとした情報)の提供を受け、かつ事業者の同意を得ているときは、少なくとも2月に1回でよい。
2月に1回に緩められる条件で提供すべきは衛生管理者の巡視結果等であり、「衛生委員会等の議事概要」ではありません(H30-問1(5))。
事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及び理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない(則13条4項)。
R4-問1(5)「辞任・解任を労働基準監督署長に報告」は出題当時は誤り(当時の報告先は委員会)。なお2026年8月1日から則13条に第5項が加わり、辞任等を労働基準監督署長にも報告する制度が新設されます。「いつの法令で問われているか」を意識する分野です。
事業者は、塩酸・硝酸・硫酸・亜硫酸・弗化水素・黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス・蒸気・粉じんを発散する場所における業務(令22条3項)に常時50人以上従事させる事業場については、労働者の歯又はその支持組織に関する事項につき、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない(則14条5項)。
「専属の産業歯科医に健康管理等を行わせる」(H28-問1(5))という制度は存在しません。あるのは歯科医師の意見を聴くという規定だけ。また対象は50人以上で、「30人」は数字の罠(R2-問1(5))。有害物を扱っても人数と義務の中身を正確に。
産業医の選任義務がない50人未満の事業場でも、事業者は、必要な医学知識を有する医師その他省令で定める者(=必要な知識を有する保健師。則15条の2)に健康管理等の全部又は一部を行わせるよう努める(法13条の2)。健康相談に適切に対応する体制整備にも努める(法13条の3)。国は、これらの事業場の労働者の健康確保のため相談・情報提供等の援助を行うよう努める(法19条の3)。
作業主任者は「規模」ではなく「危険有害な作業があるかどうか」で選任義務が生じます。各特別規則(特化則・有機則・酸欠則など)の入口にあたる横断テーマで、ここでは管理体制の一員として位置づけを押さえます。
事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で政令(令6条)で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は技能講習を修了した者のうちから、当該作業の区分に応じて作業主任者を選任し、当該作業に従事する労働者の指揮その他の事項を行わせる(法14条)。選任は則別表第一の区分による(則16条)。同一場所で同一作業に2人以上選任したときは職務の分担を定め(則17条)、選任したら氏名と行わせる事項を作業場に掲示する等で周知する(則18条)。
総括・衛生管理者・産業医は事業場の人数で決まりますが、作業主任者は人数と無関係。R7-問1ホは、硝酸(=令別表第三の特定化学物質)を取り扱う作業があるので、人数を問わず特定化学物質作業主任者を選任しなければならない(正しい肢)。「試験研究のため取り扱う作業」等は除外されます(令6条18号)。作業主任者を要する主な作業=高圧室内・特定化学物質・有機溶剤・鉛・四アルキル鉛・酸素欠乏危険場所・石綿・放射線 等。
ここは安全側の色が濃いですが、第3章に位置し、総括との取り違えで繰り返し問われます。まず「1事業場の体制」か「混在現場の体制」かを仕分けます。
①1つの事業場の中の体制=総括・安全管理者・衛生管理者・産業医(法10〜13)。②元請と下請が同じ場所で混在して働く現場の体制=統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者・店社安全衛生管理者・安全衛生責任者(法15〜16)。肢を読んだらまず「①か②か」を判定すると混乱しません。
元方事業者のうち、建設業その他政令で定める業種(=造船業。令7条1項)を行う者(=特定元方事業者)は、その労働者と関係請負人の労働者が同一の場所で作業するとき、労働災害を防止するため統括安全衛生責任者を選任し、元方安全衛生管理者を指揮させ、法30条1項各号の事項を統括管理させる。ただし、作業従事者の数が政令で定める数未満のときは選任不要(法15条1項ただし書)。統括安全衛生責任者は、その場所でその事業の実施を統括管理する者を充てる(2項)。
| 仕事の区分(令7条2項) | 選任が必要になる作業従事者数 |
|---|---|
| ずい道等の建設、一定の橋梁の建設、圧気工法による作業 | 常時30人 |
| 前号以外の仕事(一般の建設・造船業) | 常時50人 |
造船業の混在作業は50人(R4-問1(1)の「30人」は誤り)。圧気工法は30人(H30-問1(2)の「50人未満を除き」は誤り)。ずい道・一定橋梁・圧気工法=30人/それ以外=50人とセットで。R1-問1(1)は「50人の建設業で総括も必要」を誤らせる罠——統括は建設50人〜/総括は建設100人〜で分岐点が違います。
統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種を行うものは、資格を有する者から元方安全衛生管理者を選任し、法30条1項各号のうち技術的事項を管理させる。その事業場に専属の者を選任する(則18条の3)。資格は一定の学歴+建設工事の安全衛生の実務経験等(則18条の4)。
建設業の元方事業者は、統括安全衛生責任者を選任すべき場所以外の一定規模の混在現場について、請負契約を締結している事業場(=店社)ごとに店社安全衛生管理者を選任し、現場担当者への指導等を行わせる。対象人数は、ずい道等・鉄骨造等の建築=常時20人、その他=常時50人(則18条の6)。職務に少なくとも毎月1回の巡視を含む(則18条の8)。
統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人(=下請)で、自ら仕事を行うものは、安全衛生責任者を選任し、統括安全衛生責任者との連絡その他の事項を行わせる(法16条・則19条)。選任したら遅滞なくその旨を統括側に通報する(法16条2項)。統括・元方・店社・安全衛生責任者の代理者は則3条を準用(則20条)。
統括安全衛生責任者(現場全体の総元締め)→ 元方安全衛生管理者(技術的事項の実務)/各下請には 安全衛生責任者(連絡役)。統括を置かない中規模の現場は、店社(本店・支店)から 店社安全衛生管理者 が巡視・指導する、という補完関係です。
労使で安全衛生を調査審議する会議体。委員構成・議長・「半数の推薦」・開催頻度・周知/保存の区別が問われます。
事業者は、政令で定める業種・規模の事業場ごとに安全委員会を設ける(法17条)。設置規模は業種別:林業・鉱業・建設業・製造業のうち一定業種・運送業のうち道路貨物運送業等・自動車整備業・機械修理業・清掃業=50人/その他の令2条1・2号業種=100人(令8条)。
事業者は、政令で定める規模(常時50人以上の全業種。令9条)の事業場ごとに衛生委員会を設ける(法18条)。委員は次で構成し、第一号の委員は1人:
さらに、事業者は当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士を委員として指名することができる(法18条3項=任意)。
委員に指名できる測定士は自社の労働者である測定士に限られ、委託先(外部の測定機関)の測定士は不可(R2-問1(2))。しかも「指名することができる」=任意であって義務ではない。R6-問1のCは「必ず入れる委員」を問い、答えは衛生管理者(法18条2項二号=義務)で、作業環境測定士(任意)は誤り。「〜しなければならない(義務)」と「〜できる(任意)」の読み分けが急所です。
安全委員会と衛生委員会の両方を設けなければならないときは、それぞれの設置に代えて安全衛生委員会を設置できる(法19条)。委員構成は安全・衛生を合わせた形(安全管理者及び衛生管理者・産業医・安全/衛生の経験者等)。
委員会の議長は第一号の委員がなる(法17条3項)。第一号の委員以外の委員の半数については、事業場の過半数労働組合(なければ過半数代表者)の推薦に基づき指名しなければならない(法17条4項)。これらは、過半数労働組合との労働協約に別段の定めがあれば、その限度で適用しない(法17条5項)。
議長になる第一号の委員は「総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者等」でよく、必ずしも総括でなくてよい(R4-問1(2))。だから総括の選任義務がない事業場でも議長は置けます(H29-問1(4)は正しい肢)。また委員の半数は「推薦に基づき指名」であって、「あらかじめ意見を聴取」では足りません(R4-問1(2))——推薦のほうが労働者側の関与が強い形です。
事業者は委員会を毎月1回以上開催する(則23条1項)。開催の都度、遅滞なく委員会における議事の概要を、掲示・書面交付・社内端末閲覧のいずれかで労働者に周知する(則23条3項)。また開催の都度、委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容等を記録し、3年間保存する(則23条4項)。付議事項は則21条(安全)・則22条(衛生。作業環境測定結果・健診結果・長時間労働対策・メンタルヘルス対策等)に列挙。
労働者に周知するのは「議事の概要」(則23条3項)。「委員会の意見及び講じた措置の内容」は記録して3年保存する対象(則23条4項)であって、周知対象ではありません(R3-問1(4))。R5-問1のDも保存年数=3年。
委員会を設けている事業者以外の事業者(=50人未満等)も、安全・衛生に関する事項について関係労働者の意見を聴く機会を設けるよう努める(則23条の2)。労使のコミュニケーションは規模を問わず求められます。
単独出題は多くありませんが、親条文(法25条の2)はH30-問1(4)で正解肢として登場済み。ずい道・圧気工法の救護は衛生(酸欠・一酸化炭素中毒)の範囲でもあり、押さえておきます。
爆発・火災時の救護に備える体制で、安衛則では第1編第2章の二(救護に関する措置)に置かれます。管理体制(第3章)の周辺に位置し、総括安全衛生管理者が指揮する対象にも「救護の技術的事項を管理する者」が含まれます(法10条1項)。
建設業その他政令で定める業種の仕事で、政令で定めるものを行う事業者は、爆発・火災等に伴い作業従事者の救護に関する措置がとられる場合の労働災害を防止するため、次を講じる:①救護に必要な機械等の備付け・管理、②救護に関する訓練、③その他救護に必要な事項(法25条の2第1項)。さらに、資格を有する者から技術的事項を管理する者を選任する(同2項)。対象の仕事(令9条の2):
H30-問1(4)「通路として用いる深さ50メートル以上のたて坑の掘削を伴うずい道建設で、救護の技術的事項を管理する者を選任」は正しい肢。「1,000メートル以上」「深さ50メートル以上(通路用)」「0.1メガパスカル以上」の3つの数値を条文どおりに。
| 条 | 内容の骨子 |
|---|---|
| 24の3 | 救護に必要な機械等の備付け:空気呼吸器又は酸素呼吸器/メタン・硫化水素・一酸化炭素・酸素の濃度測定器具/携帯用照明器具ほか。備付けの時期(ずい道1,000m・たて坑50m・圧気0.1MPaに達する時まで) |
| 24の4 | 訓練:機械等の使用方法・救急そ生等・安全な救護方法。備付け時期までに1回、その後1年以内ごとに1回。記録は3年間保存 |
| 24の5 | 救護の安全に関する規程(組織・機械等の点検整備・訓練の実施等)を定める |
| 24の6 | ずい道等の内部・高圧室内で作業する作業従事者の人数・氏名を常時確認できる措置 |
| 24の7 | 救護の技術的事項を管理する者の選任:備付け時期までに、その事業場に専属の者を選任(代理者・特例は準用) |
| 24の8 | 資格:ずい道は3年以上ずい道等建設の経験、圧気は3年以上圧気工法の経験+大臣の定める研修修了 |
| 24の9 | 技術的事項を管理する者に、救護の安全に関し必要な措置をなし得る権限を与える |
救護の技術的事項を管理する者は「備付け時期まで(=事由発生時まで)」に選任する必要があり、14日以内の猶予はありません(則24条の7第1項)。この点は元方・店社・安全衛生責任者と同じ扱いです(→ 横断パターンで整理)。
2019年の産業医・産業保健機能の強化で入ったルール。「産業医について労働者に何を知らせるか」を正確に押さえます。
産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の内容その他の産業医の業務に関する事項を、掲示・備付け等の方法で労働者に周知させなければならない(法101条2項)。周知すべき事項は次の3つ(則98条の2第2項):
周知の方法は、①各作業場の見やすい場所への掲示・備付け、②書面の交付、③社内端末での常時閲覧、のいずれか(則98条の2第1項=則23条3項各号の方法)。
R3-問2は、業務の具体的内容のほかに周知すべきものを問い、正解は「健康相談の申出の方法(ハ)」と「心身の状態に関する情報の取扱いの方法(ホ)」。一方、健康診断(イ)・健康教育や衛生教育(ロ)・ストレスチェックと面接指導(ニ)は、産業医に関係しそうでも周知3項目には入りません。周知の趣旨は「労働者が産業医を安心して使えるための入口情報」に絞られています(相談方法を知らないと相談できず、情報の扱いが不安だと相談できないため)。
法101条は、1項=法令の要旨の周知、2項=産業医に関する事項の周知、と分かれています(4項はSDS等の通知事項の周知)。「何を周知するか」で項を区別できるように。
条文をまたいで繰り返し問われる「型」を、最後に1か所へ集約します。
総括・安全管理者・衛生管理者・産業医・安全衛生推進者等の選任は、事由発生から14日以内が原則。猶予がない(=事由発生時までに選任)のは次の4つ:
| 14日以内(原則) | 猶予なし=事由発生時までに |
|---|---|
| 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医・安全衛生推進者等 | 元方安全衛生管理者・店社安全衛生管理者・安全衛生責任者・救護の技術的事項を管理する者 |
混在現場の指揮系統(元方・店社・安全衛生責任者)と救護の管理者は、その体制が要る場面ではもう危険が現に存在しているため、14日待つ余地がありません。「現場が動く前に置く」役職だと理解すると覚えやすい。R6-問1のBは総括=14日が正解でした。
| 場面 | 報告先 |
|---|---|
| 総括・安全管理者・衛生管理者・産業医を選任したとき | 遅滞なく所轄労働基準監督署長(原則電子申請。則2条2項等) |
| 産業医が辞任・解任したとき | 遅滞なく衛生委員会又は安全衛生委員会(則13条4項。*2026年8月1日から労基署長への報告も追加) |
| 安全衛生推進者・作業主任者・救護管理者等を選任したとき | 氏名を作業場に掲示する等で関係労働者に周知(署長報告ではない) |
| 対象 | 取扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 委員会の議事の概要 | 労働者に周知 | 則23条3項 |
| 委員会の意見及び講じた措置の内容 | 記録して3年間保存 | 則23条4項 |
| 産業医の勧告の内容・措置 | 記録して3年間保存 | 則14条の3第2項 |
| 救護の訓練 | 記録して3年間保存 | 則24条の4第3項 |
| 用語 | 意味 | 典型例 |
|---|---|---|
| 選任 | 置くこと | すべての管理者 |
| 専任 | その職務だけに就く(兼務しない) | 専任の衛生管理者 |
| 専属 | その事業場だけに所属する | 専属の産業医/原則専属の衛生管理者 |
| 総括安全衛生管理者 | 1事業場の総責任者(トップ本人) | 法10条 |
| 統括安全衛生責任者 | 混在現場の調整役 | 法15条 |
| 準ずる者 | 委員会議長は可/総括は不可 | 法17〜19条 vs 法10条2項 |
肢を読んだら、(1) どのプレイヤーの話か →(2) それは規模・有害業務・作業の有無のどれで決まるか →(3) しきい値の数字と「専任/専属/準ずる者/推薦/意見聴取」等の用語が条文どおりか、の順で照合します。正しい部分に誤りを一語だけ紛れ込ませる作りが多いので、「どの一語・一数値で誤らせているか」を特定する読み方が有効です。